○Fan-ファイル〜その2〜 「漫画な彼」 |
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●業種:フード系 ●職種:ラーメン屋
●給与:時給950円 ●その他:まかない有り ●勤務時間:18:00〜23:30 |
ラーメン屋でバイトをしているときの話。 前にも書いたとおり2階は1人で担当が基本なので、その日も夕方から店に入り、適当に客が来るのを待っておりました。 基本的にこの店は飲屋街の中にあったりするので、普通で言う晩飯の時間というのとは違った時間帯が込み合う時間だったりするわけなのです。 さて、まぁ大体はじめはやることも無いので店に置いてある漫画とかを適当に読んでいるわけですが、そんな時間帯に彼は来るのです・・・。 来るときはいつも大きな紙袋を手に持ってやってくるその彼。彼が来る時間というのは他の客はいないので、彼はラーメン屋の二階貸し切りっ!いぇい!ってな感じ。 そもそも、1人で来る客は1階の方で対応してくれるはずなのだが、彼は有る意味有名人なので、2階に案内されてしまうわけなのです。 彼は店の奥の4人がけのテーブルに毎回着席。 注文を聞くと「ラーメンとチャーハン」とボソッと答えてくれるそんな彼。いつも同じ物を食べます。 彼は注文を終えると、手にしていた大きな袋から大量の漫画(雑誌)を取り出し、それを机の上に重ねるという作業を毎回行います。大体数にして5,6冊くらいの漫画雑誌。 週刊の物が殆どでまぁ皆さんも目にしたことがあるようなやつです。 彼はその中からおもむろに1冊の雑誌を選び食い入る様に読み始めるというのがまぁ彼の決まった行動パターンだったりしてます。 彼の注文した「ラーメンとチャーハン」は程なくして完成。客の殆どいない時間帯なので、結構すぐできてしまったりします。 そんな彼の晩飯は店に備え付けられている料理を運ぶエレベーターで2階まで上げられてくるわけです。これを俺がささっと彼の前へ運んでいくという感じ。 「ラーメンとチャーハンお待たせしました」といつものように元気よく運んでみるものの、彼は漫画を食い入るように見ているため、殆ど反応無し。寂しいもんですねぇ。 そんな彼の事は放って置いて俺の方も漫画とか読んでたりしておりますと、大体他の客が2階に案内されて来ますので、その相手をしなければなりません。注文を聞いて、下にその注文を伝えて、またエレベーターで運ばれてきたらそれを出して・・・そんなことを何回かやっていると、大体1時間位の時間が過ぎますでしょうか。 ふぅ〜少し混んできたなぁ〜などと思いつつ店内を見渡すわけです。 すると、当然の事ながらさっきの彼も目に入るのですが・・・ 1時間ほど前に彼の前に運ばれたはずの「ラーメンとチャーハン」は未だ手つかずっ! そうなのです、彼は毎回この店に来て「ラーメンとチャーハン」を注文するものの、料理ができて運ばれてきても大体1時間〜1時間半は漫画を読むことに集中しているため、その料理に一切手を付けないのでございます。 大きな紙袋から出した本をすべて読破するまでは彼は料理の事は全然見向きもしないで黙々と読書ならぬ読漫をしているわけなのです。 そこでふと、思うことがあったわけなんです。 「1時間以上放置したラーメンっておいしいのか?」これです、これ! チャーハンの方はまぁさめておいしく無くなったというレベルで何となく理解ができるわけなのですが、完全に伸びきったラーメンは旨いのか?いや旨いはずは無いんだけど、彼は毎回この作業を繰り返すわけで、もしかしたらラーメンって のびた方が旨いのかおい?という素朴な疑問へと発展。 彼を眺め続けてみたわけなんです。 すると、やっと手持ちの漫画を全部読破した彼は、まるで「ラーメンとチャーハン」がたった今運ばれてきたかのごとく普通にラーメンにコショウをかけ、割り箸を割り・・・ ずじゅぅずじゅずじゅぅ〜 と、スープをこれでもかっ!という程に吸い込んだラーメンを食しはじめたわけなのです。 「満面の笑み」 そのラーメンを食べた直後の彼の顔を言葉に例えるならまさしくこれでしょう。それくらい幸せそうな笑みを見せてくれたわけなのです。 その後の彼はまた凄く、さっきまで黙々と静かに漫画を読んでいた青年はそこにはおらず「ラーメンとチャーハンを」怒濤の勢いでむさぼる変なお兄ちゃん(おやGに片足をつっこんだ位の人)がそこに登場!という感じ。 ずじゅぅずじゅずじゅぅ〜 とできたてのラーメンを食べる時はどう考えても出そうにない異様な音を発しつつ、モリモリ食べまくります。 「少しは噛んだ方がいいぞぉ〜」 と声をかけてあげたくなるような、そんな食べ方に驚きです。近くのテーブルの人も一瞬その音に気づき視線を投げるのですが、まるで「見てはいけない物を見てしまった」という感じですぐに彼から目を背けたりしちゃいます♪ 彼は結局料理ができてもずーっと食べずに漫画を読み、読み終わったかと思うと蛇のごとく料理を丸飲み状態で食べることから、回転の速い1階のカウンターではおじゃまになってしまうので毎回2階へと案内されるのでございました。 でもさ、2階でもじゃまだぞ・・・。 一通り丸飲みが終了すると、さっさと帰って行くのでありました。 そしてまた次の週やってくるのでした・・・。 |